心身医学における診断ミスの回避とケースレポート

今回はケースレポート。


日本の近畿地方にある某大学病院で実際にあった症例を紹介します。

今から紹介する症例はすべて精神科を受診している患者のケースになります。

どの症状も原因がわからないため「心因性」から伴われる症状であると誤診されていました。


ケースレポート①

初期診断:うつ病による心因性嘔吐


79歳、以前は健康な女性が嘔吐や食欲不振の症状を呈しています。
9ヵ月前に彼女は交通事故に遭い、血気胸、右鎖骨骨折、および左肋骨骨折を受傷してしていました。
彼女は3ヵ月で完全に回復しました。
長期入院中、彼女は自分の回復に対する自信を失い、退院したときに一人で暮らすことに不安を感じることがありました。

報告にある医師の元に来る2か月前に、彼女は嘔吐し始め、次第に憂鬱な気分になり、食欲不振を経験しました。
彼女は嘔吐を恐れて食べ物を食べるのを控え、体重が減りました。
他の診療所で上部消化管内視鏡検査を行ったところ正常な所見を示したため、
彼女はうつ病による心因性嘔吐または摂食障害の診断で当院に紹介された。

胸部X線と胸部CT検査では左横隔膜ヘルニアを認め、上部消化管レントゲン写真では胃円蓋よりも上部に胃体の癒着を伴う胃捻転を認めた。

上部消化管内視鏡検査では粘膜はほとんど正常であったが、わずかに赤みがかって浮腫も認められた。
胃腸内視鏡による胃の位置を元に戻すことは、
胃体と左横隔膜との密着性のために不可能であり、また胃瘻のために不可能であった。
横隔膜ヘルニアの根治手術を行い、胃軸と位置を正常化した。
手術後、彼女は嘔吐することなく食欲を回復し、23日目に退院した。


最終診断:「胃の捻じれ」

ケースレポート②

初期診断:摂食障害

24歳の男性が吐き気、嘔吐、および体重減少の症状を呈します。
去年から、彼は時々吐き気と嘔吐に苦しみ、正常な食欲を持っていたにもかかわらず15kg(82→67kg)減量してしまいました。
彼の身長は170.7 cmです。
最初に、彼は自分の肥満を改善するために減量を望みました。
彼は自分の理想的な体重は65kgであると述べました。
別の診療所で上部消化管内視鏡検査を行ったところ、
正常な所見があることが明らかになり、消化管運動用の薬で症状は改善されませんでした。
彼は摂食障害の診断で著者ら、医師に紹介されました。

入院後の観察下で、彼は時々予期せずに嘔吐し、そして他の時にはうまく食物を飲み込んだので、それは自己誘発嘔吐ではなかった。
食道X線撮影で食道アカラシアが認められた
経内視鏡的筋切開術は彼の症状を軽減しています。

最終診断:「食道アカラシア」


まとめ

何故このような誤診があるのか?

この論文の著者はこのような診断システムの考え方があるため、
起きるものと考えていました。


システム1とシステム2の比較:臨床推論の種類
直感的なプロセス分析プロセス
システム1システム2
ヒューリスティックアルゴリズム
パターン認識仮説推論
特徴スナップショット診断総合診断
気まぐれな良心的
利点もっと早く科学的な
効率的分析的
デメリットバイアスもっとゆっくり

これは心理学上でも、物事の判断にはシステム1,2があるとされており、
システム1は直感、システム2は理論的と言われています。

人間の判断にはこの2つのシステムが働いており、どちらかが優れていれば良いというわけでもありません。

診断という点においては、システム1で行われる診断は医師の診断数や臨床数に比例し、精度が上がるのかもしれませんが、反対にバイアスによる思い込み診断も起きやすくなります。
その変わりシステム1の診断は迅速であるがため、人の信頼が得られやすいことも特徴となるため、好まれやすい傾向になってきます。

そして、システム2の診断になると検査を重ねたり、精度を高めるため時間を要します。

そのため、様々な視点から詮索され精度が高い診断が下りやすいですが、
レスポンスの遅さなどが問題とも捉えられやすいです。

そして、著者らは誤診を防ぐための6つの対策も提案しております。


1.知らない疾患の診断は不可能なため、稀な疾患であってもその特徴を把握し、
 鑑別する知識が必要。

2.些細にも捉えられる異常な所見を見逃さない

3.真の診断には時間を要するという認識が必要。

4.安易に「心因性」や「うつ状態」などの診断をするべきではない。
 それは精神疾患の理解が足りていないということにもなっている。

5.器質的な異常が見られなければ、機能的な異常を考えましょう。

6.医師の傲慢な態度、自信過剰、感情的な診断は誤診を招いています。
 患者の声、患者の視点でも診るということが、正確な診断と患者から求められていることに繋がっています。


もし、患者という立場でこういった例に遭いそうな時は、話し合うか別の人を頼るべきかもしれません。


小山A、大竹Y、安田K、他 心身医学における誤診の回避:ケースシリーズ研究 バイオサイコソックMed2018; 12:4。公開された2018年3月13日。doi:10.1186 / s13030-018-0122-3